雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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エロくて切ない『凪渡り ― 及びその他の短篇 』

私が今まで読んだことのある漫画で一番エロティック。これは間違いない。

4309728472凪渡り ― 及びその他の短篇 (九竜コミックス)
高浜 寛
河出書房新社 2006-03-16

by G-Tools
★★★★



「凪渡り ― 及びその他の短篇」は高浜寛の短編集。エロい短編集。

高浜寛はラヴ・ストーリーの描き手として、ちょっと他に似た人がいない。
漫画におけるラヴ・ストーリー、その大多数は恋に夢見る少女漫画的なもので、なかなかアダルトな恋愛を見せてくれる作品は少ない。数少ないそれらでさえ質の高いものは限られていて、少女漫画の延長線上にあるものがほとんどだ。
高浜寛のラヴ・ストーリーを見ても甘酸っぱくはならない。アダルトな、成熟されたものに甘酸っぱさなんてあるはずもなくて、代わりにため息が出る。

私が気に入っている手塚治虫の言葉に次のようなものがある。

「君たち、漫画から漫画の勉強するのはやめなさい。一流の映画をみろ、一流の音楽を聞け、一流の芝居を見ろ、一流の本を読め。そして、それから自分の世界を作れ。」

近頃の多くの作家が似たように感じられるのはやっぱり漫画から漫画の勉強してんだろうなという気はする。ジョジョがいくらおもしろいとは言ってもこれほどまでにその劣化コピーが多いというのも私がそう思う要因の一つなのだけれども。

そんな中で荒木飛呂彦はもちろん、高浜寛はまさに手塚治虫の言葉を実践してきた作家の一人。
荒木飛呂彦は日本の漫画に加えて洋画(特にホラーやB級)やバンド・デシネが大好きな人だし、高浜寛は漫画より文学の影響が大きいとのこと。ちなみに彼女が漫画で一番影響を受けたのはジョジョらしいのだけれど、しかもその影響を受けた所というのが鼻の描き方というから、まあ推して知るべし。そのジョジョだってどこかの1話しか読んでないらしいしね。でも確かにジョジョの鼻はチャーミング笑。

高浜寛は好きな作家にレイモンド・チャンドラーや大江健三郎を挙げている。作中には百年の孤独の名前が見られたりもする。
そのような他の漫画家とかなり違った成分で高浜寛という作家は出来ている。だからこそ彼女は手塚治虫の言う確固とした“自分の世界”を作れている稀有な作家であり、人間の“滑稽”、つまり人間の素顔を描くことにおいて他の漫画家と比肩できない。というか漫画家でこれを描けている人がそもそも高浜寛以外にいない、残念なことに。

この短編集において高浜寛の視線は“エロ”に向けられているのだけれども、そのエロさだって大人のエロさということ。少年誌や青年誌でよく見られるような扇情的な、あざといエロさとは全く違う。
まず絵が素晴らしい。こんな色気のあるタッチで描ける人を私はこの人くらいしか知らない。光の処理の上手さから生まれる白黒とは思えない豊かな色彩や構図の独特さも相まってこの人の絵は何気ない表情がそれだけでエロい。それだけでエロいのにこの短編集では直接的なシーンがたっぷりあるわけで、まあ尋常じゃないエロさ。しかも高浜寛の描く女性の裸って、この人しか描けないものなんだよなぁ。女性ゆえだろうか、映画で女優のベッドシーンを見ているみたいというか、とにかくエロい。

絵もエロければ話もエロい。
この短編集では総じて物事がうまくいっていない抑圧された状態の男女が描かれる。高浜寛はそんな人々の心が凪いだ瞬間、そして心と心が繋がった瞬間を巧みに捉える。少女と中年男が、不倫が原因で男と別れた女性と彼女がエッチする音を隣の部屋で盗み聞きしていた男が、彼らはほんの一瞬だけ繋がる。高浜寛が描く女性の裸はもちろんエロいけど、心の裸をも少しだけ見せてくれる。
そう、高浜寛の作品がお洒落で終わらない所は、その物語が現実を切り取っているから。絵がエロいだけじゃないんだよ、人間を描いているからこそエロいのだ。

甘酸っぱい恋なんて今までいっぱい読んできた。少年の、少女の気持ちを思い出すのもいいけれど、大人ならこんなアダルトな作品を読んでもいい。今までラヴ・ストーリーが苦手だと思っていた人、世界が変わりますよ?
こんなにエロいなんて言葉を使ったことはないし、これから使うこともないだろう。それくらいエロい、エロくて切なくて、ぐっとくる短編集。
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