雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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映画と比べて考える『ブロークバック・マウンテン』

大筋は映画と一緒。でも見せ方は相当に異なる。

ブロークバック・マウンテン(E・アニー・プルー)

★★★★



あらすじなんかは映画の記事を参照してくれるとありがたいです。できるだけ映画と小説どちらも見ていないという方に気を使ったつもり。ただどちらかと言うと読んだ人向けの批評よりなので、未読の方は気をつけてください。

映画から先に入ったのだけど、こちらも傑作。
まず手に取ってみて感じたのは存外に薄いってこと。短編小説だから当然といえば当然。2時間の映画をどうやって作ったんだろうなと思いながら読み進めた。

冒頭で述べたように大筋はこの小説も映画もそんなに変わらない。
ただ決定的に違う部分もいくつかあるのでそこらへんを考えてみたい。

最初に気になったのはブロークバック・マウンテンでの二人の作業の描写。映画の方では詳細に描かれていて、だからこそこの山がジャックとイニスの二つとない理想郷となってしまったことが分かりやすかった。そして何といってもこの山は美しい。文字通り筆舌に尽くしがたいってものは確実にあるわけで、そこは映画という表現媒体の良さだろう。
それに対してプルーの小説の方は映画に比べると描写はあっさりとしている。ただそれはこの場面だけのことではなくて、家族での生活の場面など全般的に小説が最低限の描写なのに対して映画はそれを上手く膨らませている感じ。別に悪口ではなくて、小説はもっと色々できる素材を限界まで削った作品だと思うのよ。削ったことでしか出せない良さはもちろんあるし、文章がすごく美麗で練られている印象を受ける。味わい深い。

ここまでは映画と小説という媒体の違い、長編と短編の違い。

後いくつか内容について。
大筋は異なるとはいっても、時系列や演出の場面が差し替えられていたりという細部の違いはあったりして、ここは映画の脚本の上手さ。小説がダメってことではなくて映画の内容に即している考えられた変更ってこと。一番印象に残った演出の変更はラストのあのシャツのシーンなんだけど、あれは映画の方が良かったかなー。

まあそこらへんの細かいことよりも大事なのは小説の方がかなりはっきりとしているという点。
例えば二人が初めてキャンプの中でやっちゃった後の朝。イニスは「おれはゲイじゃない」と言い、ジャックはそれに応じて「おれもだ」という。またブロークバック・マウンテンでの仕事を終えてジャックと別れたイニスは急に道端で慟哭する。ここらへん映画では行間を読ませる感じだったのに対して小説では明確に説明されている。
また映画がイニスからみたジャックは主に彼の主観でしかなかったのに対して、小説ではまた違った面もいくつか明かされる。イニスが同性愛に悲観的だった理由は映画でも語られるが、ジャックが開放的だった理由も小説では語られる。イニスがジャックの妻や両親と話す場面やある事件の真実だってそう。

これは良い悪いの問題ではなくて、テーマの違いだろう。
映画はあくまで二人の愛とイニスの幻想と受容、これを叙情性豊かに描いた作品だった。小説の方はそういう部分もあるにしろ、削りに削って二人のカウボーイの対称性とそれゆえのそれぞれの結末を描き、さらには当時のワイオミング州を再構成しようとまでしている。
だからこそ異なる表現を選択しなければならなかったわけで、小手先ではなく必然的な違いだと言える。

どちらが好きかと聞かれたら映画の方だけど、あくまで“私は”という但し書きをつけたい。どちらも違った味わいのある傑作だから。
映画を気に入った方は原作小説も読むとより深く理解できるだろうし、何より興味深いと思う。逆もまた然りということで、セットでおすすめです。
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