雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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揺れ動く島々の姿『夢幻諸島から』

新ハヤカワ銀背の第一部の締めに相応しい傑作!

4153350117夢幻諸島から (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)
クリストファー・プリースト 古沢嘉通
早川書房 2013-08-09

by G-Tools
★★★★★


 
 初めてのプリースト作品。発売直後からかなり絶賛な批評を目にしていたので読んでみたのだけれど、これが本当に素晴らしかった。これは他の作品も読んでみるしかないなあ。

 ドリーム・アーキペラゴ(夢幻諸島)という架空の群島をテーマにした連作短編集。夢幻諸島のガイドブック形式で、アルファベット順に様々な島が紹介されていく。

 まずこの作品の凄さはガイドブックの著者による序文で紹介される島の姿がそのままこの作品の姿を映し出していることにあって…。島の総数が計測不能であり、また地理上の位置を決定するのが困難であり、名前が紛らわしくて別々の島なのかそれとも同一の島なのか分からない島々があり、そもそも存在するかどうかさえ不確かな島さえ存在しているという。またそもそも夢幻諸島には時間の渦巻きが存在しており、ある意味では時間の流れさえ一定ではないとか。
 また著者は身も蓋もないことを断言しちゃう。このガイドブックに書かれていることは嘘であると。そもそもこのガイドブックはガイドブックとしての体裁をなしていないし、そのために使われることを想定していないと。単純にそれぞれの島を紹介するだけでなく、その島の住人の手記もあれば、重大な事件が語られることもある。手紙が挿入されることだってあるのだ。

 もちろん単体の短編でも面白い話はたくさん揃っている。殺人スライムの話なんてモンスターSFとして本当に楽しいし、超自然的な存在が潜む塔には本当にぞくぞくしたし、ラストを飾る芸術家二人の物語はこの作品集のラストを飾るに相応しい美しさと壮大さで鳥肌が立った。
 でも本当に面白いのは読み進めていくうちに少しずつピースがハマっていって見えてくるこの島々の姿であり、見えてきたと思ったら遠ざかっていく眩暈を起こさせるような快感なんだよね。例えば、ある短編で語られた殺人事件の謎は別の場所でまた光を当てられ、さらにはまた異なった物語が見えてくることになる。この語りと騙りには本当にクラクラしたよ。

 このように連作短編集とはいえ、物語には一応の流れが存在する。それはカリスマ政治家であった謎めいたカウラーの人生であり、カウラーとチェスター・カムストンの恋愛であったり。そこにパントマイマーのコミス殺しの謎、モイやヨーといった様々な芸術家たちの足跡、そしてトンネルくぐりや殺人スライム、不死人といった様々な要素が絡み合い、読み進めていくうちに夢幻諸島の姿を立体的に構築していく…ような気がする。
 そう、気がするだけなんだよね笑。ピタッとピースがハマる感覚は少なくて、それだって覆されたりもする。むしろつながりそうでつながらないもぞもぞ感がたまらない。それは何でかっていうと、そもそも島の名前が多い上にややこしいので中々覚えづらい。地図が存在しないので地理的な絡みが想像しにくい。連作短編にも関わらず、時系列に100年ほどの幅があるので、中々頭の中の整理がしにくい。これって序文で説明されていた夢幻諸島の姿そのものなんだよなあ。

 そして極めつけにこのガイドブックに書かれていることは全て嘘なのだから! またそもそも著者自体が…笑。という風に近づけば近づくほどこの島の姿は遠くなっていくようでもあり、そういう意味では確かにこの本は夢幻諸島のガイドブックでもあり、決してガイドブックではないのだ。
 多分島の実像を見極められる日は永遠にこないのだけど、見極めようとする試みが、また揺れ動く島を眺める行為こそがめちゃくちゃ楽しいんだよね。こればっかりは間開けると意味がないと思うので、近いうちに再読するつもり。また夢幻諸島の中を新たな角度から体験出来ると思うと今からもう最高にわくわくしてます。新銀背第一部のラストを飾るに相応しい傑作でした。
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| 小説 | 23:35 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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