雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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理想の自分になることは、誰にとっても難しいの『スーパーマン・フォー・オールシーズン』

今年読んだ邦訳アメコミの中では一番のお気に入り。

4796871527スーパーマン・フォー・オールシーズン (ShoPro Books)
ジェフ・ローブ ティム・セイル
小学館集英社プロダクション 2013-05-29

by G-Tools
★★★★★


 
 バットマン:ロングハロウィーンなどのローブ×セイルの黄金コンビが描いたスーパーマンの名作ということで…。表紙は少々野暮ったいのだけど中身はすんごく温かみのあるコミックで、今まで邦訳されたスーパーマンの中でもこれほどスーパーマンのことが好きになれたことはなかったなあ。

 スープスの四季というタイトル通り、春(ジョナサン・ケント)、夏(ロイス・レーン)、秋(レックス・ルーサー)、冬(ラナ・ラング)の四章・四人の語り部によって各々のスーパーマンが描かれていく。スーパーマンの一年を、芽生え、開花、失墜、復活、と植物のようになぞらえて物語っていく趣向。

作付けをしたトウモロコシの成長ががあまりに早いと…十分に根を張る時間のないまま、茎が自重に耐えられなくなる。そして味は台無しになる。スモールビルのような町で育った幸運にクラークは気づいているのだろうか。


 スモールビルでケント夫妻の愛を一身に浴びて、そしてラナやピートのような友人たちとの緩やかな青春によってスーパーマンとしてのクラーク・ケントは少しずつ育まれていく。このスモールビルでの生活がいいよねぇ。穏やかで、愛と友情に溢れていて。だからこそ人間をはるかに超えた能力を持つ男はスーパーマンとしての理想に目覚め、そしてメトロポリスに旅立つことになるわけだ。メトロポリスの地平線はスーパーマンにしか見えないものだから。そして十分に大地に根を張ったスーパーマンはメトロポリスで鮮烈な開花を果たす。

私はこの街に人生を捧げてきた。個性を与え、外見を磨き、洗練させた。私は彼女を麗しく仕立てた。そしてその容貌を愛でた。にも関わらず…私は裏切られた。他の男のもとに走ったのだ。“スーパー”な男とやらに。


 そしてここで描かれるレックス・ルーサーもまた単純な悪役じゃあない。確かに理想を追う根っからの善人ってわけではないのだけど、そんなルーサーがいたからこそ今のメトロポリスがあるわけで…。彼の街であったはずのメトロポリスが横からかっさらわれた時、それはスーパーマンと敵対せざるをえないよなあ。そう、本当のヒロインはロイスではなくてメトロポリスなんだよね。そしてどこまでも普通の人間であるものの、メトロポリスを作り上げ、支配し、さらには仇敵であるスーパーマンの存在を瓦解させる知力。そんな人間の極北としてのルーサーの魅力をジェフ・ローブは余すことなく描いてくれる。

看護師は傷に包帯を巻く。牧師は慰めの言葉をかける。親は子供を抱きしめる。それは単なる個人的な善行に留まらない。周りの良心を目覚めさせるのだ。


 何でもできるわけじゃない。ルーサによってその理想に疑いを持ったクラークは有給をとってスモールビルに帰ってくる。「難しいのは自分の限界を知ることじゃない…自分の限界とどう向き合うかだ」「理想の自分になることは、誰にとっても難しいの」人間をはるかに超える力を持っていても、スーパーマンは全能ではないんだよなあ。でもだからこそ、理想を追い続けるその姿は私たち普通の人間と変わらない。そして大きく、広く周りの良心を目覚めさせるからこそスーパーマンは神ではなくてヒーローなのだ。

 ティム・セイルの温かくも美しいアートと併せて、アメコミを読んでいるとは思えないくらいゆっくりとしたリズムの読み心地。それでいて、全能に限りなく近くても決して全能ではないクラーク・ケントが何故スーパーマンになろうとしたのか、なりえたのかがひしひしと伝わってくる。何故ヒーローたりえるかが分かる。そして冬を耐え抜き、より逞しくなったクラークの姿は泣けた。
 またスーパーマンを育み、そして変わりゆく故郷スモールビルの姿がとても印象的なんだよね。夢破れたピートの苦しみ、足元から人生がひっくり返ったラナの優しさにはめちゃくちゃグッと来る。しかし正直あんまりスーパーマン読んでないせいかロイスの魅力が分からないのさ。…などという余計な戯言は置いといて、スーパーマンに魅力を心底分からせてくれる大傑作でした。もちろんおすすめ!
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| 海外マンガ・原書 | 01:58 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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