雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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王道をさかさまに『アンランダン』

ミエヴィルは今月出るクラーケンもめちゃくちゃ楽しみ。

430920547Xアンランダン 上 ザナと傘飛び男の大冒険
チャイナ・ミエヴィル 内田 昌之
河出書房新社 2010-08-17

by G-Tools
★★★


 
 ここ数ヶ月チャイナ・ミエヴィルにハマってキング・ラット以外はひと通り読み終わってしまったところ。どれも大変好みで面白かった。一応児童向けのこれを最初にレビューするのはあんまり適切ではないのかもしれないけれど、むしろ大人こそが楽しく読めるファンタジーであるし、ミエヴィルにしてはひねくれ方がストレートで分かりやすいので久々に文章を書くリハビリにはちょうどいいかななんて思ったり。
 ちなみに特に私のお気に入りのミエヴィル作品は『ペルディード・ストリート・ステーション』とミエヴィルがDCでライターをやってる『Dial H』というアメリカンコミックなのだけれども…。Dial Hが打ち切られたことに対する憤懣やる方ない気持ちはまた別のお話ということで。

 異様なボロ傘に導かれたディーバとその友人ザナは、奇妙な人々と生き物が暮らす世界に迷い込んでしまう。そこは裏ロンドンというロンドンと表裏をなす都市であった。預言書によると、ザナこそが裏ロンドンの危機を救う救世主であるというのだが…。

 とりあえず序盤、裏ロンドンに迷い込むまでの物語が少々かったるくて中々に辛い。ミエヴィルの作品は大概最初の方はそうなんだけどねぇ。ただ他のミエヴィル作品の世界観が既存のものと異質すぎてなかなか馴染めないために読み難いというのとは違って、アンランダンの場合ティーンエイジャーたちのぐだぐだがあまりにも退屈であるためであるという気がしないでもないのだけども。
 しかし裏ロンドンに迷い込んでから段々楽しくなってくる。半分幽霊の少年、本を使った衣服売るおじさん、空飛ぶバスと電気を放出できるその車掌、屋根渡り族。ミエヴィルの小説はとにかくテンポがいいんだよね。どんどん路上を走ったり、空飛ぶバスに乗ったり、屋根の上を飛び回ったり、どこにでも行ける橋を使ったり…ひたすら移動し続けては珍妙なキャラクターとその世界観を存分に体験させてくれる。このとんでもない想像力の奔流はミエヴィルでしか味わえないものなんだよなあ。
 
 ちなみにアンランダンの魅力の一つはその挿絵。挿絵は好き嫌い分かれると思うのだけど、私は好きなのさ。特に児童文学だとムーミンやホビットの冒険、はてしない物語のような今でも覚えてるようなものも多くて。しかもこの挿絵はミエヴィル自身の手によるものなのだ! めちゃくちゃ上手いとは言い難いんだけど、素朴で味があって良いんだよね。何より中々頭では想像するのが難しいミエヴィルの世界の一端が描かれるというのがとにかく楽しい。冒険家のヨリックの姿なんて、溢れ出るミエヴィル感がたまらない笑。

un lun dun1

un lun dun2 

 そして予言書と七つの試練、そしてさかさま銃のを求める場面に至って物語はもうフルスロットル。ディーバはラスボスを倒すためのさかさま銃を手に入れるために、喋る予言書に従い七つの試練に挑むことになる。何というRPGなんて思うわけだけれども、ミエヴィルだからそんなに一筋縄でいくわけもない。
 要はアンランダンは『ペルディード・ストリート・ステーション』と同様アンチ・ファンタジーなんだよね。ただしアンランダンの場合児童書ということもあってか、そのひねくれ具合は非常に分かりやすい。要は予言書という正解が読者には示されて、ひたすら物語はそれを裏切っていくわけだ。その一つ一つの冒険や登場人物だって、まっとうなものからは程遠い。鳥かごのヨリックや潜水服のムレルなんて最高だ。これ以上は書かないけれども、しょげる予言書とショートカットには抱腹絶倒もん。ここまで天邪鬼なファンタジーなんて笑うしかない。下巻からの畳み掛けるような天邪鬼な展開の連続はめちゃくちゃ楽しかった。

 ただし、アンチ・ファンタジーではあってもその底にあるメンタリティーはやっぱり児童向けのファンラジーにある熱さなんだよなあ。運命と予言に勇気を持って立ち向かうディーバとその珍妙な仲間たちの奇妙な冒険と戦いには、笑いながらも最高に心が熱くなった。そして悪者を倒して気持ちよく終了するラストの爽快感は他のミエヴィル作品には感じられないものだ。
 というわけで、ミエヴィル好きにはもちろん、ファンタジーを好む方にはおすすめ。ミエヴィルでしか味わえない今までにない世界を体験できることは間違いないし、その一方でミエヴィルらしくない爽快でキリのよい物語が楽しめます。
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