雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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Saga of the Swamp Thing Book Three

ジョン・コンスタンティンが導く新たなスワンプシングの姿。

1401227678Saga of the Swamp Thing Book Three
Alan Moore Steve Bissette
Vertigo 2013-01-08

by G-Tools
★★★★★


 
 2巻までにおいて、ひとまずアレク・ホランドの呪縛から解き放たれ新しい自分としての新たな一歩を踏み出したスワンプシング。この3巻からはコンスタンティンの登場と共に、さらにアラン・ムーアが創りあげるスワンプシングのサーガが鼓動を打ち始める。
 吸血鬼、狼男(女)、ゾンビ…そんな古式ゆかしい怪物たちをアラン・ムーアが新たなる存在に調理し直すのがこの巻の主な趣向なのだけれども、これが素晴らしく面白かった。こんな手垢のついた、でも魅力的な怪物たちが、こうまでも新しい存在になりうるのかという新鮮な体験。“新鮮な”なんて言っちゃってるけど、これが描かれたのは1980年代後半なのだから、ムーアの綿密に構築され尽くした奇想は古びえないものなんだろう。つくづくすごいお人だと思う。

 The Nukeface Papers(核顔の新聞)はムーアが描く核をモチーフにした寓話。Nukeface(核顔)は無断で投棄された放射性廃棄物の気配を察知してスワンプシングの住む沼にやってくる。彼の容貌は放射性廃棄物を日常的に飲んでいるために、体はただれ、髪は抜け、とても人間とは思えない。
 Nukefaceは悪気は全くないが、周囲に致命的なダメージを撒き散らしていく。ある男はそうと知らずに勧められた放射性廃棄物を飲んでひとたまりもなく死んでしまい、スワンプシングは触られただけで致命的なダメージを受け、彼に親切にした女性は周囲からひどい扱いを受ける。しかしNukeface自身はどれだけ傷ついても、死ぬことはないんだよね。彼はヴィランではないのだけれど、ある種の概念であり、その超常性は寓話の世界の住人のものだ。Nukefaceが何の悪気もなく周囲に害を与え、自分をどれだけ傷つけても死ぬことはなく、様々な場所を渡り歩いて核を求め続ける姿には、今であっても、むしろ今だからこそ、何とも言いようのない感情を覚えてしまう。ちなみにこのアークで使われた新聞は実際当時ムーアが読んでいた記事を切り集めたものということで、スワンプシングの中でも特に社会的な環境問題を色濃く取り上げた物語となっている。

 Growth Patterns(生長様式)は記念すべきジョン・コンスタンティン初登場回! 行く先行く先で周囲に不幸を撒き散らし、死人を産み、でも世界を救おうとするコンスタンティンの姿が既に作り上げられてるんだよね。口八丁とその知識でスワンプシングを導きつつも、都合の良いように動かしていくその姿には、現在のコンスタさんの愛嬌がない分実に嫌なキャラクターです笑。まあでもこのスワンプシングで人気が出て、個人誌を持ったというのは納得できるなあ。この存在感は色んな意味で無視できないよねぇ。
 そして前回Nukefaceに致命的なダメージを受け、一度身体を殺し新たに再生させる技を覚えたスワンプシングは自らの新しい可能性を求め、コンスタンティンの知識と引き換えに各地で引き起こされる怪奇に立ち向かっていくことに…。

 Still Waters(澱んだ流れ)Fish Story(ホラ話)なムーアが作り上げたとんでも吸血鬼怪奇話。流水を渡ることができない、日光に弱い、棺桶の中から蘇るんだから多分呼吸しなくていい…つまり水の流れない澱んだ深い沼の中ならば、吸血鬼は安全に人間を襲って彼らの暮らしを営むことが出来るのであるなんて奇想天外かつおバカなホラ話を考えついちゃうムーア御大はやはり天才なのである。
 
SoS3.jpg

 こんなとんでもない吸血鬼物語なのだけど、やっぱり今までの吸血鬼を踏まえたものとして筋は通っているんだよね。少し笑っちゃいながらも、こんな古式ゆかしい、でも独創的で新しい吸血鬼を体験できるのはめちゃくちゃ楽しい。その結末も、ミステリー的なすっと解きほぐされる快感があって良いんだ。水中性吸血鬼のB級な外見も素敵で(画像のはその進化版)、あとFish Storyってタイトルは上手いねぇと感心したり。

 The Curse(呪い)は狼女の呪いの物語。夫に使用人のように扱われ、邪険にされている女性は突如目覚め、狼女に変異する。
 
SoS4.jpg

 狼男が満月に反応して変身する一方、ムーアの狼女は月経のリズムに応じて変身してしまう。狼女の血筋であったという呪い、虐げられた怒りで目覚めたにも関わらずどうしても夫に手を下すことができない呪い、そもそも女性であるという呪い…。その結末を含め、あまりにも救われない“呪い”の物語で、これは本当にグッときた。何にも出来ず立ちすくすスワンプシングの姿と、そのラストの鮮烈さはたまらない。

 Southern Change(南部の変化)Strange Fruit(奇妙な果実)は南部の呪いとゾンビの物語。かつてアメリカ南部には裕福な地主が多かったために、黒人差別が盛んであった土地柄であるというくらいは私にも知識としてあって…。でもこの土地ではかつての人種差別とそれによって引き起こされた悲恋と惨殺は、今でも呪いとして消えていなかった。そして呪いとともにもう一度同じ事件が再現され、当時の人々がゾンビとして蘇る。
 ムーアが描くゾンビは単なる動く死体ではなくて、かつての呪いであり消えない思念だ。この3巻で描かれる怪物はどれも何かしらの概念であって、象徴なんだよね。だからこそ、おぞましい怪物たちの裏には悲哀があるし、直視できない薄暗いものが潜んでいて、ついついぞっとしてしまう。過去の呪いは消えないし、それは時として現実の罪もない者に影響を及ぼしてしまうんだよなあ。そんな消えずに生き続ける呪いがムーアのゾンビなのだ。

 ジョン・コンスタンティン曰く、この個性豊かな怪物たちは今後引き起こされる出来事の前触れにすぎないということ。4巻でのアメリカン・ゴシック編は傑作という話なので、とても楽しみにしてます。「これらの全ての裏にいる連中のことだ!やつらはとんでもないことをやろうとしている。そして現実にそれが起こりそうな雰囲気を作り出そうとしているのさ」ムーアらしいひねくれた論理で、何かもう面白そうな匂いがぷんぷんするぜ!
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