雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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Saga of the Swamp Thing Book Two


小プロから邦訳済みのサーガ・オブ・ザ・スワンプシングの続き。
2巻までで一つの物語みたいなものなので、そちらと合わせた話。

1401225446Saga of the Swamp Thing Book Two
Alan Moore Stephen Bissette
Vertigo 2012-10-02

by G-Tools
★★★★


 
 小プロから邦訳済みの『スワンプシング』の前半は強烈なアイデンティティ崩壊の物語だった。アレク・ホランドだと思っていた自分は実は沼の植物がホランドの記憶を取り込んだ存在であって、実は何者でもないのだと。その絶望の果てにスワンプシングは自我を失った植物そのものとなり、そしてアビーの呼びかけをきっかけに現世に立ち戻る。
 アラン・ムーアのちゃぶ台返しとして有名な物語なのだけど、確かムーア自身既製のシリーズにオリジナリティを出すためにとりあえず引き継いだらキャラクターをとことんぶち壊すという話をしていたと思う。要は1巻だけ読んでもあまり分からないのだけれど、結局このアークではスワンプシングという存在が徹底的に解体されただけで、何も成されていないのだ。今読んでも1巻後半のエトリガンが関わる怪奇ものがあまり面白いとは思わないけれども、何よりあの物足りなさの大きな原因はスワンプシング自身の存在がまだふわふわしていたからだった。

 ムーアのスワンプシングにおいて、スワンプシングがアレク・ホランドではない新たな存在として一歩を踏み出すのはこの2巻なんだよね。だからこそ小プロにはとりあえずはこの2巻まではぜひ邦訳してもらいたいところ。
 いや普段は原書と邦訳をどちらも買うなんてことしないんだけど、これが出たら私も買いますよ。だってムーアの英語はやっぱり難しいんだもん。ただ難しくてもやっぱりムーアの文章は美しいんだよねぇ。ナレーションはもちろん、普通の会話であっても流麗に次のページにつながっていくんだから惚れ惚れする。

 The Burial(埋葬)において、現世に戻ってきたスワンプシングはやはり何者でもないがために苦しみ、そしてホランドの幻影を見る。ホランドの幻影と、それを眺めるスワンプシング。この姿自体が両者が別の存在であると何度も念を押しているようだった。彼はもう一度自分(であったもの)の死を見て、そしてホランドの遺体を埋葬するのだ。こうして象徴的にスワンプシングはホランドを過去の、別の存在として決別を告げる。過去と現実が交錯しながら何度も繰り返される幻影と、溢れ出るスワンプシングの悲哀はとても切ない。「彼はそこに眠っている…私は彼がそこに眠っていることを知っている…そして彼が笑っていることを知っているのだ」
 そしてだからこそそこを乗り越えたスワンプシングのアビーへ向けての笑顔がたまらないんだよなあ。「アビー、私をアレクと呼んでくれても構わないよ」

SoS2.jpg
 
 Love and Deathより始まる一連のアークは今回のメインの物語。酒もやめ人が変わったように前向きになったアビーの夫マット、でも何かしら恐ろしいことが裏から忍び寄っていることにアビーは気がつかないわけにはいかなくて…。私たちは既にマットが自動車事故による重傷で、何者かに乗っ取られたことを知っている。そう、それは現在ロットワールドシリーズでも大活躍中のアントン・アルケーン!
 サーガ・オブ・ザ・スワンプシングは初めてコミックスコードを無視して、明確に成熟した読者を対象としたアメコミであったとされる。そりゃあそうだ。ここで執拗に描かれるおぞましいイメージの数々は鳥肌ものである。マットの姿をしたアルケーンが引き込む死ぬより最悪な体験。マットの姿で実の姪であるアビーと寝てしまうアルケーンには、本当に吐き気を催すような邪悪があった。絶望の中に死を迎えるアビーと、間に合わなかったスワンプシングの心を弄ぶアルケーン。読んでいる私たちが抱く予定調和的な願いはことごとく裏切られる。スワンプシングがアルケーンをぶちのめしてもそこには悲痛と乾いた諦観しかなかった。そして悲劇は痛ましいほどに美しいんだよなあ。吐き気を催すアルケーンの姿も、アビーを抱えて静かに佇むスワンプシングの姿も、あまりに鮮烈すぎて忘れられない。

 そしてSwamp Thing Annual #2では、アビーの魂を取り戻すためにスワンプシングが地獄へ赴く。完璧なる続編なのにアニュアルである理由が良く分からないのは置いておいて、前回までと一転して実に予定調和的な話だよね。
 ただ今回はアビーの魂を救うというストーリーよりも、ムーアが描く地獄の世界観がとにかく楽しい。デッドマン、ファントム・ストレンジャー、エトリガンに案内される地獄巡りなんて楽しくないわけがないのである。デッドマンと共に死と生の狭間を歩き、ファントム・ストレンジャーと共に死後の世界でアレク・ホランドに出会い、エトリガンと共に存外にファンキーな地獄の連中を相手にする。そんなウキウキなピクニックの果てにようやくスワンプシングはアビーを取り戻すのだった。このムーアが作り上げた地獄の世界観と物語は、後のヘルブレイザーやゲイマンの『サンドマン』『The Books of Magic』でも大いに影響が感じられるのでそちらが好きな人は一読をおすすめ。

 PogAbandoned Houseはどちらも読み切り。Pogはアメリカで高名なコミックストリップ、POGOへのトリビュートらしくアートもそちらの関係のカートゥニストっぽい方が描いている。生物どうしで殺し合うようになった母星に嫌気がさした宇宙人が地球にやってきてスワンプシングに出会うという物語自体は面白くないわけじゃないのだけど、どうやらPOGOを意識してけっこうな言葉遊びをしているらしくて細部が非常に良く分からない。私の英語力の限界だなあ。
 Abandoned Houseにおいて、アビーは夢の中でカインとアベルの『House of Secrets』に迷い込む。そこでアベルによって語られる物語は1970年代にHouse of Secrets誌で発表されたスワンプシングの原型が登場する8ページの短編であり、それがそのまま作中に組み込まれるという趣向。このレン・ウェインとバーニー・ライトソンの短編自体小粒ながらも今のスワンピーにつながるような哀しい怪物が描かれていて実に切ないし、ムーアが再構築した“殺人を発明した”カインと“最初の犠牲者である”アベルが永遠にその運命を繰り返し続ける姿も印象的だ。しかしここで一番重要なのはホランド以前に存在したスワンプシングがそのままDCのコンテュニティに組み込まれたということであって、この後に語られるThe Greenや現在のロットワールドにつながる世界観がここで既に築かれていたんだよなあ。

 Rite of Springでは、死者の世界より戻ってきたアビーとスワンプシングのつながりがとうとう恋愛へまで発展していく。Sexは出来なくても、何かしらのコミュニケーションの形が必要だというスワンプシングはアビーに彼の身体になった芋を食べさせる。

SoS1.jpg
 
 いやもう凄まじいイメージの奔流にぶっ飛ばされる。ここまでエキセントリックなアートで一つになる二人の姿には呆然と眺めるしかなかった。そしてことを終えた後「これは私たちが付き合ってるってことなの?」と言うアビーに応え、熱くキスを交わすアビーとスワンプシングの姿は本当に美しくて、1巻より続く物語の結実として相応しい最後だった。そして3巻ではジョン・コンスタンティンの登場とともにまた新たなスワンプシングの旅が始まる。
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