雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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氷と炎の歌 七王国の玉座 / 王狼たちの戦旗 / 剣嵐の大地 / 乱鴉の饗宴

2月は主にこのシリーズばっかり読んでた。久々の読書による睡眠不足。

4150118442七王国の玉座〔改訂新版〕 (上) (氷と炎の歌1)
ジョージ・R・R・マーティン 目黒 詔子
早川書房 2012-03-31

by G-Tools
★★★★★


 
 海外では20世紀を代表するファンタジーの一つとして非常に高名なシリーズ。日本では安定して刊行はされてるものの、ジャンルファンの中だけの限定的な人気に留まっている気がする。日本にはあんまり大人をターゲットにしたファンタジーの土壌がないのかもしれない。最近だと獣の奏者や十二国記がヒットだと思うけれども、あれらだって全年齢向けだしね。
 私も氷と炎の歌の名前は知っていて、でも読むのは躊躇していた。というのもまあ長いんだよね。第一部の七王国の玉座ですら、文庫で約700ページの上下巻だし、第三部と第四部はそれを超えるページ数。そんなところに、ツイッターで強く推している方がおられたのでようやく重い腰を上げた次第。

 群像劇の形式で物語は語られる。登場人物は頻繁に入れ替わっていくのだけれども。まず語られるのは七王国の玉座を争う大陸での各家の抗争。これがまたファンタジーの甘い、もしくは耽美なイメージとは異なる凄惨な物語。華々しい騎士が活躍する戦いはむしろ描かれなかったりもする。近親相姦、裏切り、陰謀、粛清…名家どうしの思惑が交錯し、そして時にその家中でも骨肉相食む彼ら。濃すぎるほどの陰影にこちらは辟易しながらも、怖いものみたさにも似た興奮で読みすすめてしまった。
 マーティンが何とも容赦ないんだよなあ。悲劇も奇跡も、善き者と悪き者(そんな区別があるとすれば)を差別せずに降りかかる。どんな苦難を乗り越えてもあっけなく死ぬこともある。死ななかったりもする。死ななくてもどんでもない代償を支払わされることもある。サンサは夢物語に、ジョンは私生児の血に、ブリエンヌとジェイミーは騎士への執着に、誰も彼もが各人の業にどこまでも囚われ、逃げられない。逃げられるのは死ぬ時だけなのだ。

 またこの他に主にジョンのパートでは壁の向こうに蠢く<異形>との戦いが、大陸の向こうでは前王家の最後の子孫であるディナーリスのパートではドラゴンの血が伝わるとされるターガリオン家の復興への道のりが描かれる。ここらへん、大陸中を動き回って色んな所に顔を出すティリオンの存在も含めて、氷と炎の歌シリーズはその全体像が見えづらいのがそも面白さの一つだと思う。<異形>にしろターガリオン家にしろ、大陸の抗争と少しずつ絡みながらもどういう方向に向かっていくのかは見えてこない。また物語が進むにつれて、アリアやブランのパートなんてもはや物語の本筋から離れてしまった感すらある。大陸における各々の抗争という一つの構造の外に、マーティンはまた異なるものを色々と仕掛けてんだよね。マーティンがこのシリーズの完成形に向けてどのようにレンガを積んでいるのか…。どうしようもなくわくわくするよなあ。

 わくわくするのにはもう一つ大きな理由があって…。氷と炎の歌シリーズはファンタジーながらも、中々剣と魔法は出てこない。ドラゴンも魔法も<異形>のものたちも、既に遠い昔に滅びさった過去の出来事なわけ。そして物語が始まると同時に彼らは少しずつ蠢動を始める。そして第一部の最後には文字通り、高らかに産声を上げるのだ。このセンス・オブ・ワンダーはファンタジーというよりもSFを読んでいるみたいだよね。恐らく壁や大陸の外において主に語られるこの剣と魔法の復活が、そんなことを知らずに血なまぐさい抗争を続ける大陸を決定的に変えていくというのがマーティンの意図であるのはうっすらと感じられる。でも分かるのはそれだけで、マーティンが何を組み上げているかはさっぱり見えない。つまり、めちゃくちゃ楽しい。

 ちなみに私が気に入っているパートはティリオン、ジョン、ディナーリス、ジェイミーあたり。小人のティリオンはこのシリーズ随一の人気ということで、その憎めなさが良いやね。容姿や身体へのコンプレックスに凝り固まりながら、善意や一応の規範を持ち続け、でも誰にも顧みられることはなく、不幸を機知で乗り切っていく彼は素敵です。またジョンは決して信用されることのない“私生児”の業に振り回され、<王の盾>ながらもターガリオン家時代に王を殺した過去を背負うジェイミーは憎みながらも“騎士”への思いを捨てられない。そんな彼らは非常に人間臭くて好きだな。またディナーリスのパートでは、このシリーズでは珍しくその胸のすくような、そして何より剣と魔法の復活を体現する物語に最高にわくわくする。

 というわけで、ファンタジー好きには間違いなくおすすめ。指輪物語等とはまた異なった、人間模様の濃い特に大人向けの物語。ただとにかく長いので、そして途中で読みやめるのが困難なので、時間のある時に手を出すのを勧めます。第五部の刊行は今年の八月ということで、実に楽しみ。そういや訳者の変更で固有名詞が大幅に変わってしまい大きな混乱があったそうだけれど、私は改訂新板が出揃ったちょうど良いタイミングで読み始められたのはラッキーだったなあと思う。
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