雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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ハーモニーのその先で『勇者ヴォグ・ランバ 』

伊藤計劃が好きだった人にはとりあえずおすすめ。

4063878198勇者ヴォグ・ランバ(1) (アフタヌーンKC)
庄司 創
講談社 2013-01-23

by G-Tools
★★★


 
 イメージとしては、伊藤計劃『ハーモニー』での意識消失後の世界を描いているといえば分かりやすいだろうか。ペインフリーによって哲学的ゾンビとなった人々へ、反旗を翻すガァダとキーハという発現技師の姉妹、そして彼女らに解放されたヴォグ・ランバという構図。全体的な世界観や細かい要素要素も含めて、明らかに伊藤計劃に影響を受けた作品であって、各巻の巻末にわざわざそれを述べているあたりがなんだか可笑しい。
 
 うーむ、しかし何とも難しい…笑。ここらへんの哲学的ゾンビだったりというSF的なガジェットからしてとても難解な上に、この世界の特徴である発現能力の設定の解説が作中ですっ飛ばされているものだからあまりに親切じゃないよなあ。一応2巻の巻末で詳しく解説されているのだけれど、2巻完結なのだからもうちょっと読者側に寄せて欲しかったよ。何より伊藤計劃作品、特にハーモニーを読んでない方には中々厳しいかもしれないという印象を持った。

 伊藤計劃は、理論を肉付けして物語を作っていく作家であるというようなことがどこかの後書きで言われていて(屍者の帝国だっけ)。キャラクターとしては比較的平板であっても、展開はある意味ハリウッド的な壮大さがあるし、映像的にもすごく格好良い場面が脳内で浮かんでくる。『ハーモニー』のラストでミィハと対決する場面なんてシビレたもんなあ。
 少なくともこの作品において、庄司先生にはそこまでのサービス精神はない。設定等を分かりやすく物語ってくれるわけではないし、理論に対して物語自体にすごく厚みがあるわけじゃあない。思えば伊藤計劃の作品ってSF的な小難しさの前に、あくまで最高のエンタメであったからこそ大した苦痛もなく考える気になったんだよね。

 勇者ヴォグ・ランバを楽しむには、どうしても自分を奮い立てさせながら能動的に考えて読んでいかなきゃいけない。そこが伊藤計劃作品との圧倒的な違いだと思う。ペインフリー後、政権をどう転覆させて脱ペインフリーを実現するか、“人類が絶滅するよりマシ”な政策であるペインフリー抜きでどう人類滅亡を回避するか…。必死に考えながら読みさえすれば、知的な刺激を与えてくれるとても面白いSFだった。
 ただ正直2巻の軍事政策会議は相当厳しかったなあ…。細かい政策は置いておくとして、価値観が常に更新される「超流動社会」自体は何となく理解できる。でもそれが体感的なものとして全くイメージ出来ないんだよね。それを形にしてくれるのがSFの面白さであり、センス・オブ・ワンダーじゃないのかな。2巻の帯の「戦争なき世界への本気の考察」はこの作品をとても分かりやすく表している。でも私はあんまり読み物に考察を求めていなかったのだった。それにしても結果として出来上がる社会は、肉体的な争いは避けられるとしても『虐殺器官』の最後のそれに非常に近しいというのはとても皮肉に感じてしまった。そんな地獄をケアすることが出来るのだろうか。

 しかしラストは泣ける。キーハが『ハーモニー』のミァハの投影であったというのが明らかになり、彼女は生きることを、新しい世界を見て回ることを選ぶ。これを読めただけでも、伊藤計劃の後を描いてくれてありがたかった。屍者の帝国を読んだなら、次はこれもぜひ。
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