雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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暴力の文学『ブラック・ダリア』

ジェイムズ・エルロイ「暗黒のLA四部作」その1。ひたすら圧倒される。とりあえずこんなLAには絶対住みたくないな。

ブラック・ダリア(ジェイムズ・エルロイ)

★★★★



バッキー・ブライカートは元は有名なボクサーであった警察官。警察内で同様に有名なボクサーであった“ファイア”リー・ブライチャート、“アイス”バッキー・ブライカートとして並び称される存在だ。しかしバッキーは彼の父親の存在や、彼が警察に入った経緯のためになかなか出世が望めない状況にいる。そんな彼だったがひょんなことでリーとボクシングの試合をすることになり、状況は一変、リーをパートナーとして特捜課に配属されることに。
それから間もなく、ロス市内で惨たらしく殺害された娼婦まがいの女が殺される。このブラック・ダリア事件と名付けられた事件の捜査に2人も参加する。前途洋々に見えたバッキーであったがそこにはLAの闇、その深淵があった。

文学とは言っても、ミステリーに近い構造になっている。これはブラック・ダリア事件の真相を解き明かすミステリーであり、LAの闇を照らし出そうとするミステリーでもある。
よく引用されるニーチェの言葉。「深淵をのぞくとき、深淵もまたこちらをのぞきこんでいるのだ」
深淵はだんだんと見えてくる。バッキーが信じていた世界はぶち壊される。ぶち壊されることで彼は彼の世界が虚飾に満ちていたことを知ってしまう。
この物語で数少ないまともな人はバッキーに何故あなたは元気なのかと問われてこう返す。「仕事が終われば事件のことなんて忘れてしまうのさ。」当たり前のように思えるかもしれない。でもバッキーはそれが出来ない。ブラック・ダリアに、深淵に囚われ続ける。誰も彼もが堕ちていく。

伏線の回収と結末も見事なものだった。というか伏線がさっぱり分からなくて、後から後からあれはそういうことだったのかと見えてくる。バッキーとともに私も全く気付かなかったり、解釈を間違えていたり、照らされたように見えてくる。
だからもう再読する時は序盤の何でもないところまで違う角度から見れておもしろい。楽天的な気持ちにはもはやなれないのだけど。

そしてLAの暗黒と狂気。
狂気というか、理性のたがが弾けとんでいるように思える。彼らは躊躇しない。殺されそうになったら撃つ、汚職だって当たり前。バッキーにしろ、警察官になるために友人を売った過去がある。彼はそんなことの原因になった父親を恨んではいるものの、友人を売ったことを後悔はしていない。彼らがおかしいのではなくて、私がおかしいのだ、そんな世界。
エルロイはこの小説をハードボイルドのアンチテーゼとして書いたらしい。それはすごく分かる。こんなLAでやせ我慢してたり格好つけたりしてたら多分その間に殺される。我慢は出来ないし、格好はつかない。
目を背けたくなるんだけど、どうしても惹かれてしまう。多分誰にでも自分の心の中に暴力的な部分はあって、そこがすごく刺激されるのだ。こう言うとあれだけど、やっぱり読んでいて楽しい。

一つ難を言うならば、登場人物の多さと物語の枝葉末節に渡る長さゆえの複雑さ。再読が基本となる小説だけど、何せ最初読んだ時といってもわりと読むのが早い私が6時間かかったからなかなかに辛いものもある。
でもこれはやっぱり暗黒小説の紛れもない傑作だ。麻薬みたいなトリップ感、陶酔感はたまらない。四部作の第1作でもあるので、ぜひエルロイ入門にもここからどうぞ。
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| 小説 | 11:55 | comments:0 | trackbacks:0 | TOP↑

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