雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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バラエティ豊かな先人達の影『20世紀の幽霊たち』

ホーンズに続いてのジョー・ヒル短編集。

409408134820世紀の幽霊たち (小学館文庫)
ジョー ヒル Joe Hill
小学館 2008-09-05

by G-Tools
★★★★


 
 「ホーンズ」がとても良かったので、引き続いてこちらの短編集も読んでみた。デビュー作が短編集ってのも珍しいだろうし、それがこれだけのクオリティならば激賞されるのもよく分かる。

 ただこの短編集が万人向けかというとそれは少し違うよなあ。というのも、この短編集は本当に守備範囲が広いのだ。何というか世の中には色んな作品があるだけに、作品によっては私が持っているものさしでは面白さを計れないものだってあるわけで…。
 「20世紀の幽霊たち」にはモダンホラーの枠に留まらない様々な作品が収録されている。純文学・幻想文学調の短編からホラー、奇妙な味まで本当にそのバラエティは豊か。一つの作品集にも関わらず同じものさしで計ることが出来ないので、作品によって好みは分かれるかもしれない。例えば「マント」なんて、ヴィラン(悪役の意)のオリジンとして非常に洗練された傑作なのだけど、アメコミを読みなれてないとその面白みが理解しにくいと思うのだ。

 ではこの短編集がばらばらな作品の寄せ集めかというとそんなことはなくて…。「20世紀の幽霊たち」が表題となっていることからも分かるように、様々なジャンルの作品の裏には20世紀の偉大なる先人達の影という重低音が響いている。後書きで影響を受けた作家を明かしまくっていたのには驚いたのだけれども、そういう意図もあってのことなんだろう。
 ただそれだけに、ロメロのゾンビ映画を題材にした「ボビー・コンロイ、死者の国より帰る」なんて長年のゾンビファンにはたまらない作品だろうけれど、ゾンビ暦の浅い私には存分には味わえないんだろうなあなんて。同じようにブラム・ストーカー「吸血鬼ドラキュラ」に思い入れがない人は「アブラハムの息子たち」にはあまり感情は揺さぶられないかもしれない。私は子どもの頃にハマって読んでいたというインプリントもあって、たまらない作品だった。

 そんなバラエティ豊かで、ノスタルジーに満ちた作品集なのだけれども。それだけに、読む人よっては心に全くひっかからないなんてことがあっても不思議ではないと思う。もちろん例外はありつつも、私の好みにはピタっとはまったので本当に楽しい読書体験だった。

 以下特に気に入ったものを少し紹介。

 「年間ホラー傑作選」
 純粋に一番恐ろしかったのはこれ。人気アンソロジー、年間ホラー傑作選に収集するために読んだある作品を追う内に思いもよらない結末に導かれていく編集者。物語と作中での怪奇小説が重なり合うラストの緊迫感がすさまじくて思わず震えた。

 「ポップ・アート」
 “十二歳のとき、俺の一番の親友は空気で膨らませる人形だった”…奇病に悩まされる友人を持つ主人公。彼の友人は猫にひっかかれたり、画鋲がささっただけで死んでしまうかもしれないのだ。そんなマジックリアリズム的とも純文学的ともいえる短編なのだけれども、この作品のためだけでも「20世紀の幽霊たち」を読んで本当に良かったと思う。この心底美しくて切ない情景はこれからもずっと私の頭の中に焼き付いているだろう。

 「蝗の歌をきくがよい」
 ホーンズ同様カフカネタ。こちらでは主人公が朝起きると角が生えていたわけではなく、毒虫になってしまっていたわけである。そもそも主人公が子どもの頃に虫を食べるなんて芸を披露していたり(蟻どころかGまで…)、毒虫となってからのはっちゃけっぷりといい、とことん爽快なまでの気持ち悪さが実によろしいです。木々津克久先生にぜひ漫画化して欲しいところ。

 「末期の吐息」
 末期の吐息を収集する博物館。聴診器を通してその吐息を聞くと、何とその当人の末期の感情が伝わってくるらしいのだ。奇妙な味としてはこの作品が一番好き。この不思議な博物館も面白いし、何よりオチの居心地の悪さにはたまらないものがあった。

 「マント」
 子どもの頃に大切にしていたマント。一瞬だけ空を飛ぶことが出来て、その直後には失われてしまったはずのマントが戻ってきて…。とことん冴えない主人公が一瞬だけ特別な力を得て、そして永遠に失ってしまうというのにはちょっと心を抉られるものがあるよなあ。大人になって偶然マントを取り戻した駄目主人公が子どもっぽく喜ぶさまを生温かく眺めていると、いきなりの鮮烈な結末にぶっ飛ばされた。ここから彼のヴィランとしての活躍が始まるなんて思うと心が躍るよ! ちなみにアメコミをイメージして書かれた短編ということで、実際コミカライズされている。
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