雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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悪魔を憐れむ物語『ホーンズ 角』

アメコミ好き・ロック好き(特にストーンズ)は必読!

4094084657ホーンズ 角 (小学館文庫)
ジョー ヒル Joe Hill
小学館 2012-04-06

by G-Tools
★★★★


 
 ここ数年日本でも話題のスティーヴン・キングの息子、ジョー・ヒルの最新邦訳。ヒルは元々キングの息子ということは隠して作家として活動していたそうで、ある程度の成功を収めた後に雑誌にこの事実をすっぱ抜かれたということ。
 ダニエル・ラドクリフ主演の映画化もちょっと前に発表されていましたね。ちなみにこれが角生やしたラドクリフ(→)。意外にハマってるんだけど、どことなく間抜けな雰囲気w ヒルの作品はこれが初めてで(というか親父さんの作品すら少ししか読んでないし)、元々「Locke & Key」というヒルがライターをやってるホラーコミックに興味があったので先にこちらを読んでみようと思った次第。

 イグが朝目覚めると、彼の頭には角が生えていた。彼はここ最近地獄のような日々を送っていた。子どもの頃から付き合い続けてきた恋人メリンが強姦されて殺され、しかも裁判では無罪となったものの町の住人の誰もが彼を犯人だと考えていたのだ。角によって得た不思議なパワーを使いながら彼は少しずつメリンを巡る真実に迫っていって…。
 
 700ページを超えるボリュームのわりには、全然長大とは感じさせない。疾走感ある展開というのに加えて、一つ一つが独立した中篇としても良く出来ているんだよなあ。一日一章ずつ読み進めていたのだけれど、一つの物語が進んでいくにも関わらず、それぞれ違った趣向の中編集を読んでいるようで楽しかった。特にカフカを思わせる冒頭から始まる第一話「地獄」は秀逸。角の力によって対面した人々が隠していた真実・罪を告白させる力を得たイグが対面する町の住人、そして父や母、兄が語る心の内は実に衝撃的だ。その次に来るのがイグとメリンの初恋を描いたポエティックな章なんだからその落差たるや凄まじい。

 また実はこのホーンズ、アメコミのヒーローものにとても近い印象を受けるのも面白いところ。突如得た力に戸惑いながらも徐々に力を使いこなしていく主人公、そして何故彼がその力を得たかを描く物語はヒーローのオリジンストーリーそのままだ。そう、これは悪魔のオリジンストーリー。
 実際前述したようにヒルはホラーコミックのライターを手がけているし、確か「20世紀の幽霊たち」ではマーヴルコミックにスパイダーマンの脚本の試案を書いたなんて話をしていたのでアメコミと関わりが少なくない方なのだろう。ホーンズ作中でもイグ自らが自身をアニマルマン等のタイツを着たダークヒーローに例えている。実際彼が着ていたのはレッチリよろしくなペニスソックスだったわけだが笑。

 ただし身は悪魔になってしまったイグなのに、彼の心は人間なのだ。角が持つ力のために知ってしまった人々の心の奥底にある感情に苦しみ、力を使って得たメリンを巡る真実を知って苦慮するイグはこれ以上ないほど人間らしい。そして人間のような悪魔であるイグとは対照的に、彼の仇は悪魔のような人間であるという逆転構造。気付かないうちに、私は悪魔を憐れみ、共感していた。

 で、逆転構造といえばメリンに関しても同じことが言えるんじゃないかな。正直メリンの真実には、最初読んだ時は定型的なお涙ちょうだいな物語のように思えて興ざめしてしまった私なのだけれども…。もうちょっと考えてみて結末が180度変わってしまったようで震えてしまった。ここからはがっつりネタバレ有の解釈の話なので、まだ読んでない人は注意。

 








 2章で少年時代のイグがオカズに使っていたジーン・グレイのコミックス。このジーン・グレイがメリンに重ね合わされていたのは明らかだと思う。X-MENはマーヴルクロスと映画でしか読んでいないので全然詳しくないのだけれど、このジーン・グレイが慈愛の心を持つ聖母のような女性である一方でその身体に世界を滅ぼす悪魔(ダークフェニックス)を秘めていたのは私でも知っている。
 人間のような悪魔が結ばれるならば、人間の心に悪魔を秘めたジーン・グレイが相応しい。ならばメリンの心にも狂気が秘められていたはずであって…。そう考えると、メリンの姉の死ぬ間際の狂乱、そしてメリンが自身の内にもそんな狂気を感じていたこと、そうなる前に一瞬で死んでしまいたいのにキリスト教徒だから自殺することは出来ないこと、リーに苦しむ間もなく一瞬で殺されたこと。そんな諸々の断片が一つの疑念につながっていく。メリンは果たして本当に聖女だったのか? まさかリーに自分を殺させるために…。ラストでイグと結ばれたメリンの姿は炎に、狂気のフェニックスに包まれていた。そんなことを考えていると心底背筋がぞっとしてしまったのだった。
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| 小説 | 00:24 | comments:2 | trackbacks:0 | TOP↑

COMMENT

キングっぽいとは思っていましたが・・・

骨付きタローさんこんばんは。
「ホーンズ」面白いですよね~!
私も自ブログで感想を書いたことあります。
でも、ヒルがキングの息子だっていうのは知りませんでしたー!!
読んでて、何かキングっぽいなあ、とは思っていたんですが、キングの本も少ししか読んでいないので、影響を受けた作家さんなのかな、くらいにしか思っていませんでした。

ネタバレ解釈、なるほどと思いました!
でも自分は普通の解釈でも泣けたのでそれでもいいですww
好きだったのは、謎めいて魅力的な少年リーに少年イグがどんどん惹きつけられていく場面です。大人になったリーにあまり魅力が感じられなかったのが残念。
「悪魔的」という言葉を使ってしまうと、それ以上複雑な人間の闇の感情を書ききれなくなってしまう感じがします。

| イザク | 2012/11/04 02:23 | URL |

Re: キングっぽいとは思っていましたが・・・

イザクさんの感想も読ませていただきました!

> 「悪魔的」という言葉を使ってしまうと、それ以上複雑な人間の闇の感情を書ききれなくなってしまう感じがします。
これに関していえばキングについてはあまり読んでないので分かりませんが、ホーンズについては確信犯ではないでしょうか。
悪魔にシンパシーを感じる一方で、リーのような人間にはシンパシーを感じることが出来ないという逆転構造が私はこの作品が面白みの一つだと感じました。
でもネットで感想見てるとリーが好きな人けっこう多いですね。
私は子どもの頃ですら相当不気味に感じてしまいまったんですが…。

そういえばホーンズの後書きにはキングの息子という言及がなかったですねw
恐らく「20世紀の幽霊たち」でそこらへんはがっつり語られていたので省略されたのかもしれません。

| 骨付きタロー | 2012/11/04 18:01 | URL |















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