雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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怪作『スワンプシング』

哲学する怪物。怪作でありながら、知性を感じさせてくれる稀有な作品。

スワンプシング(アラン・ムーア原作、スティーブン・ビセット作画)

★★★ 




元々スワンプシングというのは、爆弾の爆風で沼に吹っ飛ばされ死に瀕した科学者アレックスが化学薬品と爆発の衝撃で、沼の植物と融合し怪人スワンプシングになってしまうというもの。邦訳は出てないのでこれ以前の話は見たわけではないけど、どうやら人間に戻ることを望みながら悪と戦っていたらしい。
設定聞いただけで何だか微妙だな、と思いません? 実際発表当初は人気があったものの次第に低迷していったためテコ入れとしてVフォー・ヴェンデッタ等でイギリスで評判の高かったアラン・ムーアに全面的にこのシリーズを任せることになったということ。

こういう経緯でムーアのアメリカデビューとなったこの作品、のっけからこれまでの設定をひっくり返してしまいます。スワンプシングとはアレクが植物と融合した姿ではない。アレクは爆発で既に死亡していて、沼の植物がアレクの意識と記憶を取り込んだ姿なのだと。
これが有名なムーアのちゃぶ台返し。とんでもないよね。

ふーんそうなんだとまあ思うわけです。しかし読み進めると分かるようにこの改変がまあ上手かった。設定をひっくり返しただけでこんなに物語に深みが出てくるものなのか!
今考えるとこのエピソードはアラン・ムーアの才能を端的に示しているようでなかなかに興味深い。

スワンプシングはアレクの記憶を持っているのでもちろん殺されかけた復讐心やその他の感情はある、でもそれは確かにあるのに自分のものじゃないのだ。何を考えてもそれが自分の考えなのかアレクの考えなのか、分からない。
痛ましいまでの悲哀。おぞましくも哀しき怪物。もはやアイデンティティの喪失なんて言葉が軽く感じてしまうほどの真実を”それ”は知ってしまう。

そこからスワンプシングが絶望の末にどこにたどり着くのか、というのがこの作品の前半のお話。これが傑作だった。植物とウッドルー言う所の“肉”の関係や自然の相依存的な仕組みに思いを馳せたりして、この頃からムーアのライティングは知性を感じさせてくれる。紹介エピソードのはずなのにもうこれで完結でもかまわないくらいの出来なのだ。というかもうスワンプシング自身が自然の代弁者として完成されてしまったのでこれ以上を望むのが酷というくらいになってしまった。
ムーアの文章はこの頃から洗練されており、気付けば物語に引き込まれている。この人はコミック・ライターとは思えないくらい流麗な文を楽しませてくれるので、つい前書きを読むときですら見惚れてしまう。

もちろん連載なのでそこで完なんてできるはずもなく、後半はホラー色の強い作品が掲載されている。これが駄作とまでは言わないけど前半に比べると見劣りしてしまう。話の進め方に迷いが感じられたりスワンプシングを話に絡める必然性が薄かったりで、前半で完成されている気がするだけに蛇足というか…。先の伏線もあって消化不良感が残るのも辛い。

これ以降も連載は続いたようだけど、そこまで続編を見たいとは思わないし邦訳もされないだろうな。
WATCHMENなどでムーアに興味を持った人は出色のできばえの前半をぜひ見て欲しいなと思う。
スワンプシングをムーア作品で最初に見るのは間違いなくおすすめできない。絵も話も古くて癖が強い、まさに「怪作」なので。これがこの作品にとって最高の褒め言葉!
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