雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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愛すべきもやもや『居心地の悪い部屋』

非常におもしろいコンセプトのアンソロジー。

4041101271居心地の悪い部屋
岸本 佐知子
角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-03-27

by G-Tools
★★★★


 
 この作品集を読んでいると、何となく思い出してしまうことがある。例えば、小中学生の頃に友達同士がひそひそと何やら話していて、気になって何の話なのか遠まわしに聞いてみるものの曖昧に言葉をにごされてしまった時のこと。もしくはスティーブン・キング「ミスト」において、明かされるはずはないと承知しながらも結局霧の正体は何だったのだろうと考え込んでしまったこと。
 身近な所に私のあずかり知らない物語が確実にあって、でも決してその中に入り込むことはできないし、関与することはできない。疎外感、場違いな雰囲気と緊張感…これらは絶対に慣れることは無いけれど、それなりに今までの人生で付き合ってきた感覚のように思う。

 この「居心地の悪い部屋」はそのような、どこか居心地の悪い部屋にいるような、もぞもぞとしてしまうような、そんな気分になってしまう短編を集めたアンソロジーだ。ただこの作品集で驚かされたのは、この“居心地の悪さ”というのがエンタメとして成立してしまうということで。とても新鮮で刺激的な読書体験だった。

 それにしてもどれもこれも秀逸な作品揃い。特に以下のものはお気に入り。

 待てども待てども両親が自分の家にたどり着かない「来訪者」。彼女は母親と電話で連絡を幾度も交わすものの、全く状況は判然とせず、しかしその背景に垣間見える異常さは膨れ上がっていく。これはもう不穏さの頂点と言っていいくらいの素晴らしさ。
 スクリューに絡まった網を取ってもらうために雇った男への落ち着かなさと苛々が徐々に殺意につながっていく「潜水夫」。抑えていた感情が臨界点を超える瞬間には思わず怖気が走る。
 ケーキを食べて、まるまるとなって、まるまるとなった自分の体を見る。そんな計画を実行しようとする女性を描いた「ケーキ」。全力で置き去りにされながらも、一直線の道を走るしかないような、そんな強迫観念に満ちた文章にノックアウト。

 やろうとしていること決してはやり切れず、答えは求めるほどに遠ざかっていく。まるでカフカの「城」のように、奇怪で不条理でもやのかかった愛すべき世界たち…。この感覚は癖になるなぁ。おもしろい!
 
 読者を新しい世界に導いてくれるという点でも、本当に意義あるアンソロジーだと思う。とりあえず同じく岸本佐知子編訳の「恋愛小説集」にもこの作品集の参加作家によるものがいくらかあるということなので読んでみよう。良いアンソロジーを読むと、こんな風に他の作品に発展していきたくなるものだよね。おすすめ。

追記
恋愛じゃなくて「変」愛小説集なのね。さらに興味がそそられました。
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まとめtyaiました【愛すべきもやもや『居心地の悪い部屋』】

非常におもしろいコンセプトのアンソロジー。居心地の悪い部屋岸本 佐知子 角川書店(角川グループパブリッシング) 2012-03-27by G-Tools★★★★

| まとめwoネタ速neo | 2012/06/20 12:40 |

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