雨の中の涙のように・・・

雨の中の涙のように、私の記憶もみな時と共に消えてしまうのか? そうなる前に日本内外問わず私の愛する漫画や映画、小説について書き残しておくブログ。

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孤独と愛『人間以上』

超能力SFものの古典として有名ですね。読んだらぶっ飛ばされることは請け合い。

4150103178人間以上 (ハヤカワ文庫 SF 317)
シオドア・スタージョン 矢野 徹
早川書房 1978-10

by G-Tools
★★★★


 
何という病的な文章…。解説で引用されている「この本を読む前にあなたは静かに発狂するがよろしい。それがこの本を楽しむ唯一の方法だ。」という言葉は言い得て妙だ。使っている文法が、私達とは住んでいる世界が違う。狂おしい感情の奔流に飲み込まれてこちらまで狂ってしまいそう。

 人間以上はタイトル通り、人間以上の存在であるホモ・ゲシュタルト(有機集合体としての人間)を描く作品。他にはない能力を持つも人間としては損なわれている彼らだが、集団を一人とみなすことで人間を超える存在となる。まるで一人一人が人間における手足や頭であるかのように。
 集団なのに個体であり、また新しい存在である彼らの仲間は誰一人としていない。集団への帰属を求める強い欲求と何かに帰属することへの恐怖、つながりと束縛、孤独と自由…相反する存在と感情がスタージュンの異様な酩酊感のある筆致で綴られていく。

 少女との出会いによって白痴の男の自我が芽生える第一章を読めば、これはやばいものだと分かるだろう。静かな静かな緊張感は噴火のような異様な感情の奔流で破られる。テンションは形を変えまくりながらも最後まで高まるばかり。
 人間以外のものを理解できるというのは大いなる錯覚なのだろう。集団人からは“違うもの”としての考え方のずれがひしひしと伝わってくる。人間とは異なる存在だからこそ彼らの世界を私はうまく理解できない。人間と違う世界をもつ者を私達人間は気違いという。そしてスタージョンは気違いを誰よりも気違いに描くのだ。
 
 話自体は決して分かりにくいものではないのにこんなに読みずらいのは、私にはこんな感情を受け止める準備が出来ていなかったからか。ただこれをさくさく読めるひとは「あちら」側に行っちゃっているに違いない。それはすさまじい快感かもしれないけれど、恐らく深淵に吸い込まれるのと紙一重だ。
 孤独とは同じ世界を共有できる存在がいないことだけれども、新しい存在である彼らには仲間どころか“彼ら自身の世界”すらない…。爆発的に高められたせめぎあう感情の先に、全ての糸が解きほぐされる奇跡のような帰結と救済が待っている。

 「人間は宇宙に一人ぼっちだ」なんて言葉もありましたが、この小説で語られる“孤独”はそんなロマンシズムに満ちた生易しいものではなくて、本当に心を抉られるもの。犬には犬の、蟻には蟻の道徳があり、規範がある。ではホモ・ゲシュタルトとはどうあるべきなのか? 最高にエンターテイメントでありながらも、刺激的な読書体験だった。人間以外の存在を考えることはやはり人間自身を考えることなのだ。
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